「貧乏戦士と黄金の法則! 3ヶ月の試練」

【シーン1:終わらない貧困ループ】

活気あふれる王都のメインストリート

なのだが・・・路地裏に座り込む二人の若者の周りだけ、どんよりとした空気が漂っている。
リヒトは刃こぼれだらけの安い鉄の剣を磨いており、隣でギャンが大きなため息をついている。

ギャン
ギャン

あーあ、やってらんねえ! 毎日毎日スライムの粘液まみれになって働いてるのに、なんで俺たちの財布はいつも空っぽなんだ?

リヒト
リヒト

仕方ないだろ。稼いでも、家賃と食費、それにこのボロボロの武器の修理代ですぐに消えちまう。……でも、いつか絶対にお金を貯めて、あのショーウィンドウにある『鋼の剣』を買うんだ。

ギャン
ギャン

ケッ、そんなチマチマ貯めたって何年かかるか分かりゃしねえよ。やっぱり一攫千金、地下カジノ『ハイ・ローラー』で一発当てるしか……

その時、大通りから悲鳴が上がる。
柄の悪いゴロツキ数人が、豪奢なローブを深く被った女性を路地裏に追い詰めていた。

ゴロツキ 「おい姉ちゃん、随分と高そうな指輪してんじゃねえか。ちょっと俺たちに『投資』してくれよ!」

リヒト
リヒト

……っ! おいギャン、行くぞ!

ギャン
ギャン

おいバカ、金にもならない厄介事に首突っ込むな!

ギャンの制止を振り切り、リヒトは刃こぼれした剣を構えて飛び出す。
見事な身のこなし(日々の真面目な労働で培った筋力)でゴロツキたちの武器を弾き飛ばし、追い払うことに成功する。


【シーン2:黄金の法則と究極の選択】

助けられた女性が、ゆっくりとローブのフードを下ろす。
そこに現れたのは、息を呑むほど美しく、知的な瞳をした貴婦人(ソフィア)だった。

ソフィア
ソフィア

見事な剣さばきでした。助けていただき、感謝いたします。

遅れてやってきたギャンが、ソフィアの身なり(高級な絹の服や宝石)を見て目を輝かせる。

ギャン
ギャン

へへっ、お嬢様! 助けてやったんですから、当然『お礼』は弾んでくれますよね? 1万ゴールド……いや、2万ゴールドでどうすか!

リヒト
リヒト

ギャン、やめろ!……お嬢様、お怪我がなくて何よりです。
お金なんて結構ですから、お気をつけて。

リヒトが立ち去ろうとしたその背中に、ソフィアが声をかける。

ソフィア
ソフィア

お待ちください。……あなたのその剣、ひどく傷んでいますね。毎日休まず働いている証拠です。せめてその剣を新調できるくらいのお礼はさせて下さい。

思わぬ申し出にリヒトは足を止める。

リヒト
リヒト

そんな

リヒトはふと、ソフィアの真っ直ぐな瞳を見つめ返す。

リヒト
リヒト

お嬢様。もし本当にお礼をしていただけるなら……お金はいりません。俺に、『貧乏から抜け出して、お金持ちになる方法』を教えてくれませんか!?

ギャンが「はぁ!?」と呆れる中、ソフィアはふっと優しく微笑む。

ソフィア
ソフィア

……良い目ですね。目先のはした金ではなく、一生使える『知恵』を望むとは。いいでしょう、あなたに黄金の法則を一つだけ授けます。

ソフィア
ソフィア

『収入の1割を、決して使わずに残しなさい』
そして残りの9割で生活をやりくりしなさい。たったそれだけです。

そう言うと、ソフィアはリヒトの手に、一枚の古びた羊皮紙を握らせる。

ソフィア
ソフィア

もしそれを3ヶ月続けることができたなら……この紹介状の場所を訪ねるといいでしょう。

リヒト
リヒト

収入の1割……を3か月・・・ですか

ギャン
ギャン

おいおい正気か?そんなことしたって金はちっとも増えねぇし
むしろ使える金が減ったんじゃもっと貧乏になるだけだぜ!ばかばかしい!

ソフィアはギャンの方を向き、チャリン、と1万ゴールドを投げ渡す。

ソフィア
ソフィア

あなたはゴールドを望みましたね。さあ、どう使うか見物です。

そう言い残し、ソフィアは雑踏の中へ消えていった。

ギャン
ギャン

ラッキー!1万ゴールドだぜ!
おい!これだけあるんだ、今夜は「ハイ・ローラー」に突撃するぞ!

リヒト
リヒト

ギャン……俺、やってみるよ。

ギャン
ギャン

おお、そう来なくっちゃな!
お前にも1回だけ選ばしてやるぜルーレットの色をな!

リヒト
リヒト

いやそうじゃなくてさ。
さっきの、収入の1割をってやつをだよ。

ギャン
ギャン

はぁ!?リヒト、お前正気か?……あのなぁ、そんな簡単な方法で金持ちになれるなら誰も苦労しねぇんだよ。からかわれたんだよお前は。

リヒト
リヒト

そうかもしれないけどさ、あの人はきっと大金持ちだ。
そんな人がわざわざ俺なんかをからかうために適当なこと言うか?

ギャン
ギャン

いうんじゃねぇーの?知らねぇけどよ。

リヒト
リヒト

きっとこれには何か意味があると思うんだ……。
今はまだ分からないけど、でも、俺やってみるよ。

ギャン
ギャン

あっそ!せいぜい頑張んな!
俺は一足先に大金持ちになってくるぜ!じゃぁな!


シーン3:3ヶ月の試練

1ヶ月目

王都の高級酒場。ギャンがカジノで大勝し、テーブルにはご馳走が並んでいる。

ギャン
ギャン

ガハハ! 遠慮するなリヒト、今日は俺のおごりだ!
見たか、これが賢い稼ぎ方だぜ!

リヒト
リヒト

ご馳走様、ギャン。お前は本当に気前がいいな。

リヒト
リヒト

(でも、このお金はすぐになくなっちまう気がする……)

その夜、リヒトはもらった給料からキッチリ1割を、小さな皮袋に取り分けた。

2ヶ月目

リヒトはボロボロの剣のまま、さらに切り詰めた生活(自炊や水筒の持参)をして、確実に1割を袋に納める。

一方のギャン。カジノで運が尽き始め、身なりが少しずつ荒んでくる。「次は絶対勝てるんだ、ちょっと金貸してくれ!」と騒いでいるが、リヒトは首を縦に振らない。

3ヶ月目

給料日。激しい雨の日。様々な誘惑やピンチを乗り越え、リヒトはついに3ヶ月連続で「1割の貯蓄」を達成する。
皮袋の中身は、決して大金ではない。重さも大したことはない。だが、自分の意志で「やり切った」という達成感で、リヒトの顔つきは以前よりずっと精悍になっていた。
その隣で、完全に無一文になったギャンがお腹を鳴らしている。


シーン4:運命の扉、ギルド「キャピタル」へ

王都の一等地。重厚な石造りの建物『冒険者ギルド・キャピタル』の前に立つリヒトとギャン。

ギャン
ギャン

はらへった……なあリヒト、お前、この3ヶ月で金貯めただろ?
それでパンでも買ってくれよ……

リヒト
リヒト

ごめんな、ギャン。このお金だけは、俺が俺との約束を守って貯めた、大切な『始まりの資金』なんだ。絶対に手はつけられない。

ギャン
ギャン

冷たいヤツだなー……じゃあ俺、向こうで炊き出しに並んでくるわ……

トボトボと歩き出すギャンの背中に、リヒトが声をかける。

リヒト
リヒト

ギャン!……このギルドでの用事が終わったら、温かいスープをおごってやるよ。酒場の時のお返しだ。だから、ちょっと待っててくれ。

ギャンはパァッと明るい顔になり、「おう!絶対だぞ!」と手を振った。
リヒトは微笑み返し、そして決意の表情で、ギルドの重い木の扉をギィィ……と押し開ける。

ギルド内部

清潔で落ち着いた空間。暖炉の火がパチパチと鳴っている。
受付カウンターの中にいる女性が、顔を上げてにっこりと微笑んだ。

エレナ
エレナ

いらっしゃいませ。冒険者ギルド『キャピタル』へようこそ!

リヒト
リヒト

(ハッとして目を丸くする)……えっ!? あ、あなたは、あの時の……

リヒトの目の前にいる受付嬢(エレナ)は、3ヶ月前に街で助けたあの気高いお嬢様に、どこか面影が似ていた。

しかし、着ているのは親しみやすいギルドの制服だし、声のトーンも明るく庶民的だ。

リヒト
リヒト

(いや……気のせいか。あの時の奥様とは、雰囲気が全然違う。他人の空似だな)

エレナ
エレナ

お客様? どうかされましたか?

リヒト
リヒト

あ、いえ! すみません、人違いでした。
……俺、この紹介状を持って、ここへ来いと言われて。

リヒトがカウンターに古びた羊皮紙を置く。
エレナはそれを手に取り、ふふっ、と嬉しそうに微笑んだ。

エレナ
エレナ

なるほど、ソフィア様からのご紹介ですね。
……おめでとうございます。見事に3ヶ月の試練をやり遂げたのですね。

リヒトはコクリと頷き、大切に抱えていた小さな皮袋をカウンターに置く。

エレナ
エレナ

それで、どうでしたか?ソフィア様からの試練をやり遂げた感想は。

リヒト
リヒト

……はい。金額にしたら、大したことない少額です。
でも、俺は初めて『自分の意志』でお金を残すことができました。

エレナ
エレナ

……。

リヒト
リヒト

(ここでもっともらしいことを言う)

エレナ
エレナ

ええ、袋の重さは関係ありません。ご自身の欲に打ち勝ち、最初の資産(タネ銭)を築き上げたその『事実』こそが、リヒト様の最大の武器となるのです。……さあ、ここからが本当の『資産形成クエスト』の始まりですよ!

エレナの言葉に、リヒトの顔に力強い笑顔が浮かぶ。

リヒト
リヒト

はい! 俺に、本当の戦い方を教えてください!

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